roja music

音楽の話とライブの記録。

SAIの成功に見るACIDMANとフェス

2017年はACIDMANの結成20周年、デビュー15周年の記念イヤーであった。
その集大成として行われたフェス、SAIの大成功はファンが思っている以上だった。
それは、出演してくれた素晴らしい仲間達が、
それぞれ日本のフェスのヘッドライナー級であった事である事に起因している。
音楽シーン的には実は大してヒット曲はない。それでも、ヘッドライナーになれる。
20周年組はフェス文化を支えてきた、ライブバンドの精鋭達なのだ。
それは、スターと大木さんの対談で言われる”セリーグ”組だった。
(野球ファンから言わせれば、もはやセリーグパリーグもないと思うのだが)

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思うに、ACIDMANは不思議な立ち位置だったと、メジャーデビューからのファン歴16年目の私は振り返ると思う。
赤橙というキラーチューン、ファーストアルバムの創の成功により、いきなり初登場でロッキンのglass stageだったりした。言わば最初からエリートだったのだ。
彼らはジャパンロックフェス創成期にデビューし、そこからフェスの常連になりフェスの発展に貢献した。

ACIDMANはすごくライブをやるバンドではないと思っている。
所謂ライブバンドというのは、アルバムがなくても、リリースがなくてもツアーをやる。そして、自分の仲の良いバンド界隈で対バンを組んだりしてバンドコミュニケーションを深めていく。

その点彼らは、アルバムに重きを置いており、メジャーデビュー以降はリリースなしのワンマンというのはほぼほぼやった事がない。対バンありきの自主ライブもCinemaや、イチさんとの2マンくらい。(Trinity Tripは自主ではないので割愛)そのCinemaに出演したバンドも、同世代も勿論いたが少し上の世代の自分が好きなバンドを呼んだ、という面が強かった。一緒に音楽シーンを盛り上げていく仲間といつもつるんでるという感じではなかった。

AIR JAM界隈のメロコアでもないし、
下北の文学ロックの文脈でもないし。
立ち位置的にはなかなかポツンとした立ち位置だったと思う。

しかし、である。フェス文化が彼らの仲間を徐々に増やしていった。
毎回バンド同じじゃないか、と揶揄されることもあるが、安定のいつものメンツという感じでフェスやライブでよく会ううちに彼らはどんどん親交を深めていくことになる。

特に付き合いの長いストレイテナーTHE BACK HORNは親交が深まるのはすごくわかりやすいし、現在のバンドとしての立ち位置もかなり似ている。
しかし、色々なフェスや対バンを経て、ジャンルレス、ボーダーレスな関係を築いていく。10-FEETだったりDragon AshだったりRIZEだったり・・

そんなフェスで得た横のつながりが、今回のSAIの成功に繋がった。
フェスで育ったバンドがフェスを行う。
最初はACIDMANがフェスなんて?!と思ったが、自然の成り行きだったのかもしれない。

個人的に思うのは、やはりバンドにとってフェスに出る・出ないはかなり致命的に差が出ると思う。なかなかいろんなバンドのワンマンに行くのは難しい。そうすると、フェスでお客さんに披露する場がないと、よっぽど売れているバンドは別だが、「あの人は今」みたいな感覚になるのだ。あのバンド最近見ないけどどうしてるんだろう→解散みたいな事がよくある。

思うに、ワンマンは確かに素晴らしい。好きなバンドだったら絶対フェスよりワンマンに行きたい。しかし、20年も続けていくうちにワンマンしかやっていないと、循環が激しく滞る。フェスで自分たちのファン以外に披露する場所が定期的にあるという事はバンドにとっても、良い事なのだと思う。
彼らより上の世代はフェスを卒業しているバンドも多い。出ることもあるが、全方位的に出ることは少ないし、特にロキノン系のフェスからは卒業していくケースが多い。
ブッキングされないのか、出演拒否しているのかまでそれぞれの内情はわからないが、
ロキノンはショーケース的な面もあり、来る層も若めだ。若い層に好まれるバンドが一番大きいステージで演奏することが多い。一番大きいステージで演奏するということはある種のステータスにもなるし、きちんと来る層に合わせたブッキングをしているというのは正しい。しかし、そんな徐々にメインバンドが若くなるフェスにも、今回のSAIのメンバー達は出続けている。徐々にステージが小さくなっていく事もあるが、ステージが変わり続けても彼らは彼らのやり方でフェスを盛り上げていく事だろう。

 

気づけば私は2005年からもう10年以上フェスに行き続けている。その間一体何回彼らを見た事だろう。
ACIDMANの戦友は、2000年代のフェス文化を見続けた私たち世代にとっても、もはや戦友だった。そんな戦友たちが一堂に会したSAIは、だから素晴らしかったのだ。20年やり続ける事がどんなに大変か知っている、切磋琢磨したバンド達が称え合う美しい世界。幸せな、とても幸せな空間だった。

 

最後、クタクタになりながらも最後の国のSEが流れた瞬間、沢山の思いがあふれた。
ACIDMANをずっと好きでいる中で、見させてもらったいくつもの美しい景色。
本当にどれもかけがえのないものだ。

20周年、本当におめでとう。

絶対泣くと思ったのに、大木さん泣かなかったなぁ。私の方が泣いちゃったわ。